あなたと家族の将来を想像してみましょう。また、あなたが亡くなった後にあなたの財産がどうなるか考えてみたことはありますか?
身寄りがなく老後が不安な場合や、家族に認知症などで判断能力が衰えてきて支援が必要なかたがおられる場合には、後見制度の利用を検討してみましょう。
後見制度には「法定後見」と「任意後見」があります。
法定後見とは、認知症などで判断能力が衰えてきた場合に、後見人がご本人に代わって財産を管理し、ご本人のために必要な契約や身上保護をおこなう制度です。
任意後見とは、あなたが将来に認知症などで判断能力が衰えた場合に備えて、信頼できる人物に任意後見人になってもらうことをあらかじめ依頼しておく制度です。あなたの希望に沿った契約書を作成しておくことで望んだ支援を受けることができます。
あなたの財産を遺したい人がいる場合、または相続させたくない人が相続人の中にいる場合、「相続」を「争続」にしたくないとお考えの場合は、遺言書を作成しておきましょう。まず、相続の正しい知識が必要です。たとえば子供のいない夫婦で夫が亡くなったら妻が当然にすべてを相続できるわけではありません。遺言書を作成しておくことで様々な相続のトラブルを防ぐことができます。
はぐるま合同事務所は、後見制度や相続・遺言について豊富な知識と経験があります。まずはお気軽にご相談ください。
相談事例
ご相談内容(申立書作成・成年後見人就任)
Aさんは脳に障がいがあり、車椅子で長期入院しています。Aさんの母親が亡くなり、近親者がいないことから将来が心配です。専門家に後見人に就任してもらってAさんの支援をして欲しいと考えています。
Aさんの叔父
対応
相談者・本人にお会いしたところ、是非とも当職に後見人になって欲しいとのことでした。そこで、当職を後見人候補者として申立てることになりました。当職は公益社団法人成年後見センター・リーガルサポートの会員(名簿登載者)であるため、家庭裁判所から問題なく成年後見人に選任されました。
成年後見人に就任した直後は財産調査をしたり預貯金の届出、亡くなった母親の相続手続き、財産目録・収支計画を作成して裁判所に報告するなど大忙しですが、現在は落ち着いています。
Aさんが入院している病院は事務所からかなり遠いところにありますが、毎月病院を訪問して、Aさんの車椅子を押して売店で買い物のお手伝いをしたり、お話をしたりしています。
Aさんは当職が来るのをとても楽しみにしてくれており、帰りはいつも玄関まで見送ってくださり、「また来てください!」と笑顔で大きく手を振ってくれます。
ご利用の流れ(後見等開始申立書作成の場合)
申立人・後見人候補者を決定します。
「診断書(成年後見用)」をお渡ししますので、病院で診断をしていただき、診断書を作成してもらってください。これにより申立ての方針(後見・保佐・補助のいずれか)を決定します。
もし、診断結果が、保佐・補助相当であった場合は、どのような代理権・同意権を付与してもらうかを検討します。ご本人の了承が必要となります。
必要な戸籍等の取得は当事務所でおこなうことも可能です。
申立日に家庭裁判所でご本人・申立人・後見人候補者などに面接するなどして、調査や確認がおこなわれます(即日事情聴取)。
診断書だけでは判断能力が判明しない場合、鑑定手続きがおこなわれることがあります。
親族が後見人に選ばれるような場合には、必要に応じ、後見人を監督する監督人が選ばれることがあります。
本人、申立人および後見人に選任審判書が届いてから、2週間が経過すると審判が確定し、後見人としての活動を開始します。
料金
後見等開始申立書作成
100,000円~(消費税・実費込み)
よくある質問
(1)法定後見について
法定後見制度は、判断能力の低下の程度に応じて、成年後見・保佐・補助の3つの類型があります。「成年後見」は日常的に必要な買い物が自分ではできず、誰かに代わってやってもらう必要がある状態、
「保佐」は日常の買い物程度は自分でできるが、金銭の貸し借りなど重要な財産行為は自分ではできない状態
「補助」は金銭の貸し借りなどの重要な財産行為を自分でできるかもしれないが、できるかどうか心配な状態
をいいます。これらの類型に応じて後見人等に就任した後の権限が異なります。
成年後見人は、財産管理についての全般的な代理権、取消権があります。
保佐人は、特定の事項(借金、不動産の購入や売却など)についての同意権、取消権があります。ご本人の了承があれば、特定の法律行為(預貯金や不動産の管理など)に代理権を付与してもらうことが可能です。
補助人は、ご本人の了承があれば、特定の事項に同意権、取消権を付与してもらったり、特定の法律行為に代理権を付与してもらうことができます。
※日常生活に関する行為は同意権、取消権の対象となりません。
申立人には、ご本人、配偶者、4親等内の親族がなることができます。
申立てに要する費用は申立人が負担しなければならないことに注意が必要です(ご本人が申立人でない場合は、ご本人の財産から支出することはできません)。
後見人の報酬は、家庭裁判所が決定します。後見人が一定期間後見業務をおこない、家庭裁判所に「報酬付与の申立て」をおこないます。家庭裁判所は、後見事務の難易や活動期間、ご本人の財産などを総合的に検討し、後見人の報酬額を決定します。後見人は、審判により定められた報酬をご本人の財産の中から受領します。親族が後見人に就任した場合も報酬を受領することはもちろん可能です。
なお、ご本人の財産が少ないからといって後見制度を利用できないわけではありません。神戸市は本人の収入・資産等の状況から後見人への報酬の支払いが困難な場合に報酬を支給する「成年後見制度利用支援事業」を実施しており、また、公益性が高い仕事ですので報酬を受領することが困難な後見人に就任することも当然にあります。
まず、ご本人の判断能力が低下したからといって後見人を必ず選任しなければならないわけではありません。財産管理や重要な法律判断を必要とせず、家族で支えていけるのであれば問題はありません。
法定後見を利用するにあたっては以下を注意しましょう。
- 後見制度は一旦利用を開始すると、原則としてご本人が亡くなられるまでやめられません。そして、申立てをすると、原則として申立てを取下げることはできません。
- 必ずしも希望する親族が後見人に選ばれるとは限りません。多額の財産があったり、重要な法律行為をおこなう必要がある場合は司法書士などの専門職後見人が選ばれる傾向があります。後見制度支援制度を利用することで親族が後見人に選ばれやすくなることもありますので、書類作成を依頼する司法書士と見通しを立てて申立てましょう。
公益社団法人成年後見センターリーガルサポートは、高齢者・障がい者等の権利を擁護することを目的に、司法書士を正会員として設立された公益社団法人です。現在、全国で約8,500名(約35%)、兵庫県内で約500名(45%)の司法書士がリーガルサポートの会員です。
リーガルサポートでは、家庭裁判所に「後見人等候補者名簿」を提出しており、会員がこの名簿に登載されるには、後見業務をおこなうために必要な、後見人倫理や本人の意思決定支援、法律・医療・福祉などの所定の研修単位を取得し、一定期間ごとに研修単位の更新が義務づけられています。
また、会員が後見人などに就任した事件については、家庭裁判所への報告のほか、一定期間ごとにリーガルサポートに報告し、指導監督を受ける必要があります。
リーガルサポートの会員ではない司法書士が後見人になれないわけではありませんが、「後見の専門職」であるリーガルサポートの会員であることで、より他会信頼性を保つことができると思います。
(2)任意後見について
任意後見人は、将来にご本人の判断能力が衰えたときに、任意後見契約受任者などから家庭裁判所に「任意後見監督人」の選任の申立てをおこないます。それまでは「任意後見契約受任者」です。任意後見監督人が選任されることによりはじめて、任意後見契約受任者は任意後見人となって支援をスタートします。
ご注意いただきたいのは、「法定後見」と「任意後見」は異なる制度であるということです。
法定後見は、既にご本人の判断能力が不十分になってしまったかたのための制度です。
任意後見は、現在はご本人の判断能力に問題はないが、将来に判断能力が低下した場合に適切な支援を受けるために備えておきたいという制度です。
「成年後見制度を利用したいが、申立人がみつからないので任意後見制度にしたい。」といった相談を受けることがありますが、両制度を選択的に検討するということは原則としてありません。(例外的に即効型任意後見契約というものがありますが説明は省略します。)
法定後見は、家庭裁判所が後見人を選びますので、必ずしも希望する身近な親族が選ばれるとは限りません特に一定の財産がある場合には専門職後見人が選ばれる傾向が強いようです。また、後見人が選ばれた時点では既に判断能力が低下していることから、後見人にあなたの希望や気持ちを理解してもらうことが難しい場合もあります。
任意後見は、判断能力に問題がない段階で将来のためにあらかじめ後見人を決めておくことができます。財産の使い方、終末医療についての考えなど、あなたの希望や気持ちを「ライフプラン」にまとめておき、将来の任意後見人(「任意後見契約受任者」といいます。)に託しておくことで、あなたの判断能力が低下して支援が必要になった場合には、任意後見人があなたの希望や気持ちに添った支援をおこなってくれます。
任意後見を契約するときにもっとも大切なことは、信頼できる相手をみつけることです。
任意後見契約は将来に判断能力が低下して支援が必要になった場合に備えておこなうものですから、契約が発効せずに終わってしまうケースのほうが多いかもしれません。さらに以下の3つのしくみを必要に応じて組み合わせることで、他の不安についてもサポートすることができます。
・死後事務委任契約ー死後の葬儀・納骨や、最終の入院費用の支払い、入居施設の明渡しといった事務手続きをおこないます。
・遺言執行ーあなたの遺産をどうするか遺言書を作成し、死後に遺言執行者として遺言執行者として意思を実現します。
・財産管理委任契約(任意代理契約)ー判断能力は低下していないが、病気や怪我で身体が不自由になった場合、病院への入院や施設入所の手続きや財産管理をおこないます。
後見制度は本人の権利を擁護するための制度であることから、後見人は家庭裁判所の監督を受けなければならないこと、また、専門職後見人・後見監督人への継続的な報酬が発生することから、契約による柔軟なしくみとして、家族を受託者として信託契約を締結し、受託者となった家族がご本人の財産を管理する民事信託(家族信託・福祉型信託)の利用も増えてきています。
高齢者の財産管理の手法としての民事信託は、根差している意義は両制度に共通するところも多くあると思います。ただ、各々に長所短所がありますので、選択的にのみ考えるのではなく両制度の併用も検討することで、本人の想いをより実現できると考えています。
後見制度と比較した場合の民事信託のデメリットとしては、以下のことがあげられます。
・濫用的な民事信託のリスクがあるといわれています。
・民事信託では、本人の身上保護に必要な手続きはできません。
・民事信託は契約すると財産が受託者に移転してしまうため、本人の心理的抵抗が強いといわれます。また、「全財産」を信託することはできないため、契約後に入ってくる年金収入などは受託者は管理できず、契約後に得た財産を管理するためにはあらためて追加信託する必要があります。
・将来に本人の判断応力が低下してしまい、契約締結する能力がなくなった場合は、契約内容を変更 する必要が生じても変更できません。
(3)遺言書の作成について
自筆証書遺言は、、遺言者がご自身で遺言の全文(添付する財産目録を除く)を手書きし、日付、氏名を記入のうえ押印する方法で作成する遺言書です。なお、遺言書を法務局に保管してもらう「遺言書保管制度」を利用することもできます。
公正証書遺言は、遺言者が、公証人と2人以上の立会人のもとで遺言の趣旨を述べて、公証人が筆記したものを読み聞かせ、全員がこれに署名押印する方法で作成する遺言書です。
法定相続分とは、遺言がない場合に適用される、法律で定められた相続分のことです。
相続人 | 法定相続分 | ||
---|---|---|---|
第1順位 | 配偶者と子※1 | 配偶者 | 2分の1 |
子 | 2分の1 | ||
第2順位 | 配偶者と親※2 | 配偶者 | 3分の2 |
親 | 3分の1 | ||
第3順位 | 配偶者と兄弟姉妹※3 | 配偶者 | 4分の3 |
兄弟姉妹 | 4分の1 |
※2.父母が亡くなっている場合は、祖父母がいれば祖父母が相続人となります。
※3.兄弟が亡くなっている場合は、その子供(被相続人からみて甥姪)が相続人となります。
※ 子供や親、兄弟が相続人で2名以上いる場合はそれぞれ頭割りとなります。たとえば、相続人が妻と子供2名の場合、妻の法定相続分は2分の1、子供の法定相続分は4分の1ずつとなります。
次にあてはまる場合には、遺言書を作成しておくことをお勧めします。
①子供がいない場合
②相続人ではないが、財産を遺したい者がいる(内縁関係のパートナー、介護してくれた長男の妻など)。
③兄弟や甥姪などの相続人に相続させたくない者がいる。
④亡くなった後に相続紛争が起こらないか心配だ。
一度作成した遺言書も、後から書き直すことが可能です。
たとえばAさんに全財産を遺贈する遺言書を作成したが、何年か経ってやっぱりBさんに遺贈したいと気持ちに変化が生じた場合には、新たに遺言書を作成すれば、前に作成した遺言で抵触する部分は効力を失います。